3LDKの広いリビングに欲しいインテリア〜ソファ編〜
3LDKの広いリビングに欲しいインテリア〜ソファ編〜
ペンダントライトとフロアライトに続き、ソファ編。
今回の主役は
ル・コルビジェ。
ピカソやアインシュタインなんかと比較される建築界の巨匠。
スイス出身の建築家。スイスと言えば、時計。年間4億個以上の時計を輸出し、世界のほぼ半分の生産量を誇る。
この人は、よく昔の写真を見るとレンズの分厚い「黒縁メガネ」で出てきます。小さな頃から父親の仕事である「時計装飾」の仕事を手伝っていたけれど、視力があまりよくないために「精密で細かい作業を伴う」時計職人にとってはあまりにも大きなハンデを背負ってしまっていた。
それでも、優秀な成績を残し、本人を除いては、将来「時計職人」になるんだと、そう思っていた。
歴史を変えるような偉人には「ハンデ」が、あることが多い気がします。
ベートーヴェンの耳が聞こえなかったり、ジョサイアウエッジウッドの左足は天然痘により切断してしまうことになったり、豊臣秀吉が「手の指が6本!?」だったり、レイモンドチャンドラーが44歳で無職になったり。
たりたりたりたり。笑
そのハンデの逆風を
飛び立つための向かい風にしてしまう。
おそらく、広いリビングにお住まいの方であれば(半分偏見)、どういった「人物」がデザインし、どんな「業績や歴史」を作り、興味深いストーリーや哲学などをお求めになるのではないか?
そう考え、今回もソファだけでなく、業績、歴史、哲学やストーリーなどを交えながら、紹介しようと思います。
ル・コルビジェは本名ではない。
あれだけ、何度も得意気に「ル」って言ってたのに。笑
雑誌(『エスプリヌーヴォー』)を書くときに使った「ペンネーム」が今でも使われている。
じゃあ、本名をなんていうのでしょうか。
『シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ』といいます。
ル・コルビジェという名前が付けられたのにはいろんな理由があり、ここでは、一つだけ載せます。
ジャンヌレの横顔が烏(カラス)に似ていることから名付けられたそうです。
フランス語でカラスのことをCorbeauといいます。
彼は手紙や図面の紀章にこれを使いました。
建築物やインテリア家具だけでなく
文章にも優れていたために、ペンネームが世界中に広がっていったのかもしれません。
さて、彼の作るソファはどんなソファなんでしょう。
通称『グランコンフォール』(大いなる休息)と
呼ばれる身も心も包み込まれるような至高のやすらぎに誘う、名作です。
プラトン立体という美しさ
ここから、自分の主観を大きく交えながら、彼の作品を紐解いていこうと思います。
彼の『グランコンフォール』(大いなる休息)、正式名称『LC2』
この作品がすごいのは『ほぼ、立方体』だからだと思います。
美しい立体の形は、元来「5つ」と決まっています。
(これをプラトン立体という)
正四面体、正六面体(立方体)、正八面体、正十二面体、正二十面体
このソファは、
(幅760ミリ×奥行き700ミリ×高さ660ミリ)と、
ほぼ立方体。
ご存じの方いると思いますが、
ミケランジェロの名作『ダビデ像』。この作品は下から見上げることを念頭に入れて、頭を大きく、製作しています。
柱の間隔が美しいパルテノン神殿。この柱は、端っこの柱と、真ん中の柱とは太さが違います。
あらゆる建築物(インテリアも小さな建築の一つ)はどの角度から眺め、どんな光が当たり、どんな風に見て欲しいかが重要だと思う。
もし仮に、椅子を『立方体』に見せようと思うなら、幅、奥行き、高さはどう変えるのでしょうか?
椅子は、座ろうと思うとき「上から眺めます」そして、下から見上げないので、まず「high(高さ)」は「低く」する。
椅子は、座ろうと思うとき「上から眺めます」なので、奥に長く見えるので、「depth(奥行き)」は「小さく」する
こんな感じに立方体への「意識」が寸法に、見えるような気がする。
ミニチュアサイズで作ったおもちゃを買った
この、愛されやすい形をもとにこの椅子のスゴいところは、シンプルな構造でまとめてしまったということ。
どんな風に、シンプルな構造にまとめたのか?
光沢のあるクローム鋼管によって全体の構造を保ち、5つの膨れた黒い直方体のクッションだけでできている。
昔、世界の名作椅子をミニチュアサイズで作ったおもちゃを買った。真っ先に欲しいと思ったのがこの「LC2」。
あるとき、本棚の隙間にでも飾ろうと、箱から出して、本の横に置こうと思ったとき、手から滑り落ちるように床に落としてしまった。全部がバラバラになり、壊れちゃったと思った。
ただ、よく見るとバラバラになるようにできている。そして、指定の位置に嵌め込んでいくだけで形が出来上がった。
本物は、もっとしっくりと全体が収まるように作られているとは思う。しかし、こんなにシンプルな部品で、世界最高峰の椅子を作り上げてしまうというところに驚いた瞬間だった。
幾何学がはっきりと
ル・コルビジェは建物の分類や、デザイン上の規則といった規制の枠組みをそのまま受け入れることを拒んでいた。そして、伝統的な概念を「麻痺」、「浪費」、「不健康」、「時代錯誤」と形容し打ち捨てていった彼だからできた独創的なデザインだったようにも思う。
そして、彼は「芸術作品」に対してこう書いている。
精神は幾何学を創造した。幾何学は秩序だてんとするわれわれの深い欲求に対応するものである。我々の心に強く訴える芸術作品は、幾何学がはっきりと感じられるような作品である。
『近代絵画』p.50
「幾何学」がはっきりと感じられるような作品。ものづくりを生業とする自分には、染み入る言葉だった。